編集後記   第3号

「飛行船3号」を無事刊行することが出来、嬉しい限りである。
 四十歳代二名、五十歳代一名、六十歳代二名、そして七十歳代が四名の会員構成からすれば、いつ何時どんな支障があっても不思議ではない。元気で、一冊一冊を大切に仕上げていきたいと思っている。
 今回は創作五編、評伝一編、その他エッセイである。
 巻頭の斎藤澄子作「水葬」は、事実を土台にし綿密な取材を重ねた力作である。読者の意識になんらかの問題を投げ掛けるのではないだろうか。この事件の後も、アメリカ潜水艦による宇和島水産高校の沈没事件、海上自衛隊イージス艦との衝突による漁船清徳丸沈没事件と、悲惨な海難事故が相次いでいる。清徳丸の乗員二名は未だ行方不明だ。海だけではない、陸上でも目を覆う悲惨な事件が日夜あとを絶たない。どんなに想像を逞しくしても、現実は遥かに凄まじい。命の尊さや生きることの意味が軽視されている。この病み衰えたどうしようもない現代社会に、政治や闘争ではなく、筆でもって一石を投じるのは容易なことではない。が、単なる道楽や遊びではなく、世に問うに足る作品が提示できれば、書く営みとしては最上の喜びであり、やりがいに通じる。
 松崎慧の評伝は、土着の叙情詩人「高原熹男」に焦点を当て、新しい資料を発掘しての労作である。資料を提供して頂いた上勝町の人たちに心から感謝申上げたい。埋もれた郷土の作家は、郷土の人たちによってしか世に出ることはできない。そんな意味も込め、この度、松崎に発掘され陽の目を見た詩人高原は幸運だと言えよう。
 今回から新会員が一人増えた。歴史や民俗学に詳しいらしいので、今後の活躍を期待したい。
 本業を維持し、忙しい時間を割いての執筆活動は、根性が座っていなければなかなか遂行はできない。会員一人一人の踏ん張りに感謝感謝である。
 今回の「招待」は、ときめく歌人、紀野恵さん。同居中のペット「しろねこちゃん」をテーマにした作品である。今、若者達の人気を集め、多忙を極める中、快く寄稿してくださったご好意はまことに有難く、心よりお礼申上げたい。軽妙かつユーモラスであって味わい深い紀野さんの短歌をお楽しみいただきたい。
 このように、会員の努力を得て、多くの佳作を並べることが出来た「飛行船3号」。書店に於いても、マスコミ関係でも話題を振り撒いて優雅に飛んで欲しい。

 文化の育ち難い徳島県ではあるが、関係諸機関や、応援してくれる読者に支えられてこそ継続し、維持し、文化の種を蒔き続けることができるのである。
 今後のご支援をよろしくよろしくお願い申上げます。